今日は、1/25の糖尿病教室でとりあげた『痛風』についておさらいします。
「風が吹いただけでも痛い」といわれるほど関節に激痛が走る『痛風』は、
戦前の日本ではきわめてまれな病気でした。
このため痛風は上流階級の人が美食とアルコールのとりすぎでかかる
特別な病気と考えられていました。
実際には痛風を患う人にはそもそも痛風にかかりやすい遺伝的な素因が
そなわっていることが多く、必ずしも『ぜいたく病』であるとは言えませんが、
最近は食生活の欧米化や運動不足により患者数が急増しています。
また、痛風にかかるのはほとんどが男性で、患者さん100名のなかに
女性は1、2名しかいないのが特徴です。
痛風は血液中に尿酸という物質がたまる『高尿酸血症』を基礎としておこります。
尿酸は古い細胞のカスなどに含まれるプリン体からできる老廃物の一種で、
本来は血液にすべて溶けた状態で腎臓から尿の中にこしとられて捨てられます。
体内で増えすぎて血液に溶けきれなくなった尿酸は関節などに流れつき、
まるで針のような結晶をつくります。
これを白血球が貪食(異物を取り囲んで食い殺そうとすること)して炎症をおこし、
その箇所は赤く腫れて痛みます。これが痛風発作です。
高尿酸血症をほっておくと痛風発作だけでなく尿路結石や腎臓の障害をおこします。
さらに、高尿酸血症は最近話題のメタボリック症候群を合併することが多く、
心筋梗塞、脳卒中などを起こしやすいことから、生活習慣病のひとつして
捉えられています。
もし痛風発作がおこったら、まずはできるだけ安静にし、
患部を冷やして痛みをやわらげます。
病院ではなかなか治まらない発作に対して、消炎鎮痛剤や
強力に炎症を抑えるはたらきをもつステロイド剤を使用することもあります。
いずれにせよ、痛風発作は尿酸がたまっていることを知らせる神様の警告。
ひとたび発作が治まったら、痛風の“根っこ”高尿酸血症に対して
策を講じることが大切です。
痛風の患者さんの60%に肥満があり、肥満度が強いほど尿酸値も高くなります。
まずは食べる総量を制限し、よく歩き、標準体重を守ることが大切です。
またプリン体を多く含む食品(図)は尿酸値を上昇させますので、
頻繁にたくさん食べることは避けましょう。
焼酎ならビールほどプリン体を含まないから少しぐらいいいだろう…
…これは大きな間違い。
アルコールにはプリン体を含まなくてもそれ自身に、
尿酸の合成を増やしたり、尿酸を尿に溶けにくくする働きがあります。
なるべく「休肝日」を設けましょう。
また、適度な運動習慣は肥満を解消し、尿酸値を下げるのに役立ちます。
ウォーキングなど、軽く息が弾む程度の有酸素運動を習慣にしましょう。
これらの生活習慣に気をつけても尿酸値が下がらず痛風発作をおこす場合、
痛風はなくても尿酸値が高い場合などは、薬で治療します。
薬は高尿酸血症のタイプによって2種類を使い分けます。
すなわち、尿の中に溶ける尿酸の量が少なく排泄されにくいタイプの人は
排泄を促す薬を、体内で尿酸を作りすぎるタイプの人は尿酸が作られるのを
抑える薬を使います。
どちらのタイプかは血液と尿の検査で簡単に調べられますのでご相談ください。
横山